新・中学受験は自宅でできる
新・中学受験は自宅でできる
【 認 識 編 】
第一章、ふるい(篩)効果
■ふるい(篩)効果とは
旧版まえがきでも少し触れましたが、学習塾のふるい効果についてお話ししたいと思います。
「ふるい(篩)」とは、小麦粉や砂など粉末状の細かいものを網目を通して落とし、大きさによってより分ける道具のことです。
「ふるい効果」とは、学習塾などで「元々成績の良い者を集めて入塾させ、成績順にクラス分けをし、レベルの高く合格可能性の低い中学校を受験させないで、見せかけの合格実績を上げる」というものです。
見せかけの合格実績が高ければ、それにつられて次年度、成績の良い子供が集まりますから、その後の入試でまた合格実績が上がることになります。合格実績が上がれば、入塾希望者が増え、それをふるいにかけると、また成績の良い子が集まる。成績の良い子が集まれば、また合格実績が上がる・・・。
「元々成績の良い子をふるいにかけて集め、合格実績を上げる」という塾の経営についての視点のみで、ここに「子供の学力を上げる」という発想はありません。もしあったとしても合格実績を上げるための学力向上であって、そこには「子供のために」という教育の原点は全く見受けられません。
では、どのようにふるい効果が用いられているか、実際の例を用いてご説明致しましょう。
■ふるい効果の三段階
●第一段階、入塾テストにおける「ふるい効果」
まずは入塾の時点で「ふるい」を利用します。入塾テストを行い、学力の高い子と低い子とをふるいにかけて選別し、クラス分けや入塾の可否を決めるのです。
有名進学塾「××塾」では、入塾テストの成績によって、クラスを何段階かに分けて作っています。
最も学力の高い子のクラスを「特進○○クラス」と呼んでいるとしましょう。レベルの高い子供だけを集めたのですから、「××塾の特進○○クラス」は難関校のα中学の合格者をたくさん出します。するとそれが評判となって、次年度の募集時には「××塾の特進○○クラス」を希望する子供が増えます。「特進○○クラス」希望者が増えると、集まった多くの子の中から、より学力の高い子を選別することができます。入塾テストによるふるい分けですね。すると「特進○○クラス」の生徒のレベルは上がり、また「特進○○クラス」の合格実績は伸びることになります。
合格実績が伸びれば、また「特進○○クラス」を希望する子供は増え、前年より、より多くの子をふるいにかけることができるのです。するとまた「特進○○クラス」の平均レベルは上がり、また合格実績が上がる。これのくり返しです。
上手にふるい効果を利用することによって、塾に入る以前から、元々学力の高かった子供を集めることができ、そしてそれが難関校合格者多数という実績を生み、また翌年度に学力の高い子供を集めることができるのです。
それを外部から見ていると、『「××塾の特進○○クラス」=「α中学合格」』という錯覚におちいってしまうでしょう。例えば、『「××塾の特進○○クラス」は「α中学」の合格率100%だそうよ。』なんていううわさ(この「合格率100%」というのは真実ではありません。「第三段階、入学試験におけるふるい効果(P12)」参照)が口コミで伝わって来たりしますと、『「××塾の特進○○クラス」に入れば、「α中学」に合格できるんだ』と、思ってしまいますね。特に学習塾に対して不信感や疑いを持たない普通のお母さんなら、ほぼ間違いなく信じてしまうでしょう。
難関の「α中学」への進学者数が多いことは、その「特進○○クラス」に入れば「α中学」に合格できる力を付けてもらえるという錯覚を生じさせるのです。決してそのクラスに入ったから学力が伸びた訳ではないのに、です。しかし「ふるい効果」を知らない普通のお母さんや子供さんであれば、そういう塾の合格実績のみを見て判断してしまうのも仕方のないことです。
「××塾の特進○○クラス」に入れば「α中学」に合格すると信じていて、いくら「特進○○クラス」に入ることを望んでいたとしても、入塾テストを受ける時点での学力が足りなければ「特進○○クラス」には入ることはできません。「特進○○クラス」に入れるということは、それだけ十分な地力(基礎学力や思考力、読解力)があり、入れないということはそれだけの地力(基礎学力や思考力、読解力)がないということをふるい分けているに過ぎないのです。「特進○○クラス」に入ったから「α中学」に合格したのではなく、元々「α中学」に合格できるだけの地力(基礎学力や思考力、読解力)があったから「特進○○クラス」に入ることができたというのが真実なのです。「特進○○クラス」に合格するだけの力を持った子供であれば、「××塾の特進○○クラス」に入らず別の塾の「△△クラス」へ通っても「α中学」に合格できたでしょう。極論すればそういう子供は塾へ通わずに自宅学習だけであっても十分「α中学」に合格し得たと私たちは考えています。